インドにおける会社設立の概要
インドにおける会社設立の概要
A)進出形態
インドへの進出形態には、4つの方法がある。
①現地法人:現地に設立した法人、インド現地法人の買収も可能

②支店(Branch):親会社の本社と同じもしくはそれと同等の活動を行う施設

③駐在員事務所(Liaison Office):主たる営業所や本社とインド国内の顧客との連絡拠点

④プロジェクト事務所(Project Office):建設・インフラ整備など特定のプロジェクト遂行のために設置される事務所
B)進出形態によって異なるポイント
進出形態 事業活動の範囲 資金調達方法 本国への送金 法人実効税率 設立条件 不動産の取得
現地法人 定款目的の範囲内で自由 ・本社送金
・事業活動の利益
・借入
・増資
利益配当 32.445%(※3)ただし配当税がかかる RBI事前承認は不要。(FIPBの事前承認は必要) 可能
支店 規制あり(※1) ・本社送金
・事業活動の利益
業務範囲内で獲得したことを示せば本社への送金可能。 42.024%(※3) RBI事前承認が必要。
適格要件:直近5年の利益と純資準10万ドル必要。
本業使用目的なら可能。
第三者賃貸は不可。
(※4)
駐在員事務所 一切の事業活動は不可能(※2) ・本社からの送金のみ 原則として不可。 なし RBI事前承認が必要。承認は3年(更新可能)
適格要件:直近3年の利益と純資産5万ドル必要。
不可
プロジェクト事務所 プロジェクトの遂行に関する行為のみ ・本社からの送金のみ 原則として不可。 42.024%(※3) RBI事前承認が必要。 不可
※1:支店に許される業務とは?
原則として「支店その他事業拠点の設立に関する外国為替管理規則」で許される活動のみ可能。例外としてインド準備銀行(RBI)の特別許可を得れば可能。

具体的には以下の活動が可能だが、いかなる製造活動もできない点に注意。
  • ①物品の輸出入に関する商業活動
  • ②コンサルティング業務
  • ③本社が携わっている分野における調査活動
  • ④インド企業と本社もしくはグループ企業との間の技術的または財務的提携関係の促進
  • ⑤インド国内における本社の代表、及び購入または販売代理店としての活動
  • ⑥インド国内における情報技術及びソフトウェア開発の分野におけるサービス提供
  • ⑦本社またはグループ企業によって供給された製品に対する技術的サポートの提供
  • ⑧外国の航空及び海運会社の支店としての業務
※2 駐在員事務所に許される業務とは?
具体的には以下の活動が可能だが、営業や商業活動はできない点に注意。
  • ①本社またはグループ企業のインド国内における代表
  • ②インドからの輸入もしくはインドへの輸出の促進
  • ③本社もしくはグループ企業とインド国内の会社との間の技術的または財務的提携関係の促進
  • ④本社とインド企業との間の連絡窓口としての業務
何かのコンサルティング業務をすることは、報酬いかんにかかわらずできない。原則として親会社のため契約を結ぶこともできない。免許は原則3年更新(ただしノンバンクは更新不可)。
※3 法人所得税率について
現地法人:内国会社法人税30%×加算税5%×教育目的税3%=32.445%
支店・プロジェクト事務所:外国会社法人税40%×加算税2%×教育目的税3%=42.024%

なお課税所得が10百万インドルピーを超えない場合は教育目的税のみが課され、加算税はかからない。このため現地法人の税率は30.90%、支店とプロジェクト事務所は41.20%になる。

ただし現地法人が配当する時には、別途、配当税が16.2225%かかる。仮に利益を全額配当すると考えると、法人所得税32.445%+利益配当部分(1-32.445%)×配当税16.225%=43.4%の支払が必要となり、支店やプロジェクト事務所よりも税率が高くなるため注意を要する。
※4 支店による不動産の賃借について
事務所として利用する目的の場合、賃借期間が5年を超える場合にはインド準備銀行(RBI)の事前承認が必要であるため注意。
C)子会社(Subsidiary)設立に関する注意事項
100%子会社(Wos:Wholly owned subsidiary)はFDIの規制に抵触しないかぎり設立できる。ただしインドの子会社が「みなし公開会社」とされる場合があるため注意を要する。

※みなし公開会社に注意!
子会社が非公開会社であっても、親会社である日系企業が「インド会社法に照らして」公開会社にあたる場合、子会社も公開会社とみなされてインド会社法上のコンプライアンスが求められる。日系企業の定款においてインド会社法上の非公開企業となる要件を満たしていることは少ないため、親会社である日系企業は公開会社とみなされる可能性が高い。これにより日本の親会社が非公開会社であるにもかかわらず、インドの子会社が公開会社とみなされることがあるため注意を要する。
これを防ぐためには、①親会社が単独で100%出資するか、②子会社の株式100%をインド国外で設立した外国企業と共同で保有することが必要である。
なおインド会社法上、100%子会社のみならずすべての民間企業は少なくとも2名(公開会社は最低7人)の株主が必要であり、日本のように1人会社の設立は認められていない。このため実務上は、親会社に加えて他の関連会社(インド以外で設立)とともに保有して実質的な100%子会社を作ることが多い。
D)現地法人(有限責任会社)設立手続の流れ
外国直接投資には政府承認ルートと自動承認ルートの2つがあるが、ほとんどの産業への投資はインド準備銀行(RBI)や外国投資促進委員会(FIPB)の承認を要さない自動承認ルートに基づく。
ステップ1:デジタル署名証明(DSC)および取締役認識番号(DIN)の取得
デジタル署名証明(DSC)とは会社の設立に関連する書類を電子的方法で提出するための電子署名であり、会社の基本定款(MOA)の署名者に対して付与される。取締役認識番号(DIN)とはインドの会社の取締役になろうとする者全員が取得する認識番号である。
DSC、DINはともに企業省管轄下の会社登記局(Resister of Companies)により発行され、両者は会社設立手続書類の作成に必要となる。
ステップ2:商号の承認申請
インド会社法上、会社は中央政府が望ましくないと考える商号を登記することができない。「India」など商号に一定の文言を使う場合、最低資本額(Authorized Capital)が変更になり登記費用も変わるため留意する。
ステップ3:基本定款(MOA)及び附属定款(AOA)の作成
基本定款(MOA)には会社の商号や事業目的などの基本的事項を記載し、非公開会社の場合は最低2人(公開会社の場合は最低7人)の株主が署名する。附属定款(AOA)には会社の運営や株主間の関係について記載する。

なお附属定款の基本フォーマット(Table A)では、取締役会の議案の決議で賛否同数の場合は議長が決定権を有するとされているため、合弁会社においては定足数充足の要件などを変更しておくことが望ましい。
ステップ4:会社設立登記申請
登記の申請は企業省のウェブサイトから行い、各種申請書と基本定款及び附属定款を州の会社登記局に提出する。商号の承認から6カ月以内に申請が必要である。
ステップ5:会社設立証明および事業開始証明
会社登記局は書類を確認して審査を行い、会社設立証明を発行する。非公開会社は取得後に事業を開始することができるが、公開会社はさらに事業開始証明を取得する必要がある。設立証明書を発行した後に株主は資本金を払い込み、新設会社は一定期間内に申込金を受領したことをインド準備銀行(RBI)に通知しなければならない。その後RBIが会社に登録番号を発行する。
E)その他設立時の注意事項
  • ①株主総会の議決権は株主の「頭数」が原則
    インド会社法では株主総会での決議方法が日本の会社法とは異なる。事前に「株式数に応じて議決権を有する(Poll)決議方法」によることが要求されない限り、保有株式数にかかわらず出席株主の「頭数」で決議されるため注意。
  • ②株主総会の特別決議の要件が異なる
    特別決議は出席株主の4分の3以上の賛成が必要であり、これも頭数ベースで決議されるのが原則である。附属定款に株式数をベースに決議を行う旨を記載しておく方が望ましい。
  • ③株式の売買価格
    外国人投資家による買収や株式持分の移転を行う場合は、外国為替管理法下の規則に従う必要がある。取得・譲渡ともに売却価格についてSEBI(インド証券取引委員会)の価格決定ルールに従う必要がある。規則に従って算出された公正な評価額より安い価格で売却することはできないため注意する。